小学1~3年生の練習を1年間ほぼミニゲームだけやったらどうなる?驚きの結果とポイントを解説
(注)これは実験ではなく、低学年の指導を15年以上の指導者経験と諸先輩方の助言をもとに、
選手達を成長させる為に自分の中で最善の指導を行った結果です。
いきなりですが、U10以下のカテゴリーの練習はどのようにしていますか?
サッカーを教えることも難しく、練習させるだけでも大変な年代ですよね。
僕も以前はいろんなテクニックや戦術、動きを一生懸命教えながら練習をしていました。
そして各地の大会で優勝したり、低学年の中では結果を残してきました。
しかし、その選手達が学年が上がるとなかなか試合で勝てなくなる。
そしてサッカーを辞める選手も出てきました。
そんな中で指導者の方にアドバイスを頂き、今のミニゲームばかりの方針に変えました。
ミニゲームばかりやり続けた結果
結論:指導者の能力や想像を超えた選手が育つ!!
「指導者の能力や想像を超えた選手が育つ」
この一言に尽きます。
練習メニューの中で教える内容は指導者の能力の範疇で成長することになります。
なので、指導者の指導力以上の選手になれません。
そのために指導者は日々勉強する必要があります。
しかし、ミニゲームばかりやってきた学年の対外試合を見ると、
指導者の予想を超えたプレーがどんどん出てきます。
「サッカーはサッカーでしか上手くならない」と名将といわれたモウリーニョ監督は言いましたが、
この学年の選手達を見て、僕も痛感しました。
特にU10以下の低学年は、練習のほぼ全てをミニゲームにするべきだと確信しています。
ここに、ミニゲームをやり続けた結果変わった点を紹介します。
①選手達が意欲的に取り組むようになった
②体験→入部の数が劇的に増えた
③試合中に選手同士で声をかけるようになった
④サッカーというスポーツを感覚的に理解できるようになった
⑤コーチ、選手ともにゲームを観る眼を養うことができた
①選手達が意欲的に取り組むようになった
選手達がゲームだと意欲的に取り組むことは容易に想像できましたが、
ゲームだけでなく、アップや準備片付けに対する取り組みも格段に良くなりました。
アップの中でリフティングやボールタッチなどを短時間やりますが、
この後ゲームができるという安心感があるため、短い時間で技術向上をしようという選手が増えました。
ゲームに向けて準備やアップに対するモチベーションも上がり、
ゲームを全力で楽しんだテンションで片付けまで一気に終わらせて、
「めっちゃ楽しかった」と家に帰る。
この繰り返しにより、サッカーをもっと好きになっていき、さらに意欲的に取り組むようになりました。
②体験→入部の数が劇的に増えた
これはチーム経営としての話になりますが、
やっぱりゲームを楽しくやっていることで入部する選手が増えました。
そこで選手や保護者の方に話を聞くと、
「みんな楽しくサッカーやってたから」「ゲームが楽しかった」
という意見が非常に多かったです。
サッカーを楽しくやれる環境を作ることで、自然と選手は集まるようになります。
③試合中に選手同士で声をかけるようになった
ゲームをやり続けた一番のメリットかもしれません。
試合中に声が出ない、と悩む指導者も多いと思います。
僕も以前は悩んでいました。
声をかけろ、と言っても声が出るようにはならず、
声かけの内容などを教えてもそれを実行するのは難しいです。
練習だとどうしても指導者主体で進むため、指導者の指示通りに動くことが多いですが、
ゲームになると選手主体なので、その中で主体性が出て、自然と声が出ます。
開始前と途中に【作戦タイム】を入れると、実際の試合に近づきます。
いきなり試合で「自分達で話せ」と言っても出来ないのは当たり前で、
作戦タイムの積み重ねが、選手達の会話の量と質を向上させます。
④サッカーというスポーツを感覚的に理解できるようになった
サッカーとはチームで協力しながらゴールを目指し、相手より多く点を決めるゲームです。
そのために必要なことを練習の中で取り組んでいくと思いますが、
総合的に必要なことを身に付けるにはゲームが一番です。
ゴールを決めるためにはどこを狙うといいのか、どこを守るべきなのか、
ゲームを通じて感覚的に学び、その中で選手自身が気づくきっかけをたくさん作ることができます。
⑤コーチ、選手ともにゲームを観る眼を養うことができた
練習が常にゲームであるため、指導者は常にたくさんのゲームを観ることになります。
その中でアドバイスをしたりゲーム設定を変更していくことが求められるため、
ゲームの内容やチームの現状を深く理解することが大事になります。
また、選手達も練習でのゲームとはいえ絶対に負けたくないので、
どうすればこのメンバーで勝てるかを考えながらプレーします。
そういう環境に身を置くことで、ゲームを客観的に観る眼を養うことができ、
僕自身も試合でのハーフタイムの修正などで大きく成長を実感しました。
ゲームを行う上でのポイント
サッカーに必要なものは全てゲームに詰まっているので、ゲームをやるだけでもある程度効果はあります。
しかし、ゲームのルールや設定を変えることで、内容が大きく変化します。
ここでは、ゲームを行うポイントを整理します。
人数
人数は3~4人チーム(多くても5人)で行うことをオススメします。
ジュニア年代の試合は8人制だから、といって8人に拘るのは良くないです。
その理由としては、1人が関わる時間が圧倒的に少なくなるからです。
練習の中でのゲームの理想は、メンバー全員が常にボールに関われる環境をつくることです。
3対3ではサッカーの基本である三角形をイメージしやすいですが、
バランスが非常に取りづらいため、選手がスペースを意識する感覚を身に付けるのに適しています。
1人が意識できていないとカバーが大変なため、全員が常に集中してプレーする環境を作れます。
基本的に3人だと個人技術や個人戦術を向上させるのに効果的です。
4対4ではポジションの概念や配置をイメージしやすく、非常にバランスが取れます。
特にポジションをダイヤモンド型やボックス型などで役割が大きく変わり、
その中で試合でのポジションに適したプレーを選択できるようになります。
基本的に4人だとグループ戦術やチーム戦術を身に付けるのに効果的です。
ゲームの人数について詳しくはまた記事を準備中です。
ルール設定
実際の試合では縦長コート、縦横比が約7:5ですが、
練習では目的に応じて横長のコートに変更したり、ゴールの数も2ゴールや4ゴールなど
ルール設定を変更することも可能です。
低学年で特にオススメは4ゴールゲームとなります。
どちらのコートを攻める(守る)か?
駆け引きの幅が広がることで、まだ技術が低い低学年の子でもプレーできる幅が広がります。
また選手のレベルによってルールを追加することで
制約の中でプレーすることになり、新たな気づきを得ることができます。
ルール設定や制約の内容については記事を後日アップします。
声のかけ方
ゲームの中では、可能な限りプレーを止めずに声をかけるのが理想です。
声かけの3原則は
「短く」「分かりやすく」「ポジティブに」です。
良くない内容の時もありますが、そこで何度も止めるとさらに悪くなります。
ちょっと我慢して観察して、いいプレーが出たら褒める。
それで選手からいいプレーを引き出すことができます。
当チームの話(実際のところどうなの?)
僕が1~3年生(+4年生の時もあり)を担当し、ほぼミニゲームのみでやってる当チーム。
3年前からミニゲーム中心に変えました。
それまではドリブルのタッチや1対1に拘ってやってきましたが、テクニックはあるがスキルがないチーム。
なので、今の5年生が3年になる前くらいにゲーム中心に切り替えました。
なので今の5年生以下はとにかくミニゲーム中心にやってた学年です。
一昨年の話(今の5年生が3年生の時)
この学年は年度当初は人数が少なく、常時参加するのは3人のみでした。
ゲーム中心でやろうと決めたものの、僕の中では正直、半信半疑でした。
2年生と一緒にアップ→リフティング→股抜き対決→ゲームの流れでひたすらやり続ける日々。
そしたら常時参加する人数が7人となり、
負けてばかりだった試合も、U10の大会でグループ優勝するまでになりました。
しかもその大会は僕はほぼ指示なしで、自分達でメンバー決めから全て行いました。
ポジション等も全く教えてませんが、チーム全体でバランスよくプレーできていました。
これはゲームを繰り返し、選手同士で話し合う時間をとったことが効果が出たと思います。
そして4年生になった時点でU12の中心メンバーになり、今では完全にこの学年がチームを引っ張ってます。
昨年の話(今の4年生が3年生の時)
この学年は人数が常時6人くらい来ていましたが、とにかくやんちゃ。
話を聞かない、ケンカばかりする、つまらない練習はしない。
実はこの学年をどうにかしようとして結果、ゲーム中心になりました。
しかし、この学年が「ゲーム中心でいい」と確信させる成長を見せてくれました。
本当に練習させようとしてもやらない学年だったので、
アップしたらすぐにゲーム→作戦会議→ゲームと試合と同じ流れにして、メンバー入れ替えてまたゲーム。
するとケンカばかりしてた選手達がゲームに集中し始め、作戦会議ではかなり建設的な話が。
そうなると、ゲームで勝てるようにと、アップも集中してやるようになりました。
春先では同じ3年生相手に大敗していた選手達が、冬にそのチームと試合してほぼ互角以上。
しかも試合ではポジションチェンジを繰り返しながら、パスでもドリブルでも相手の逆を突く。
そして守備でもいい距離感で狙いどころを絞り、ボールを奪う。
戦術的なことはもちろん教えていません。
僕がやったことは、面白いチャレンジや狙いが伝わるプレーに対して「いいね!」「すごいとこ狙ったな!」
と声をかけ続けたくらいです。
あとは、雑談の中でYouTubeでバルサ(ペップ時代)の動画をたまに見せてたくらい。
この学年も今年のU10で大会グループ優勝を果たしました。
もちろん僕は見てるだけです。(人数が多かったので、出場時間の調整はしました)
この学年は僕の指導レベルを遥かに超えたチームになりつつあります。
今年の話(今の3年生以下)
この学年は逆にドリブル系をがっつりやった時期がなく、細かいボールタッチは全然できません。
しかし、プレー中に顔が上がってるし、全員がパスを出すのも受けるのも他の学年より数段上手いです。
ゲームもそれまでは2ゴールばかりやってきましたが、この学年は4ゴールを多くやっています。
フニーニョと言われる3対3の4ゴールゲームが多いです。
なので今までの学年のようにドリブルメインでの駆け引きではなく、
パスやポジショニングで駆け引きをする場面が非常に多くなってきています。
おそらく僕の指導で練習を行うと、もっとゴリゴリのドリブルばかりになってしまうと思いますが、
ゲーム中心の指導をやってきて、教えるエゴを出さないようになってきたので、
いい意味で僕らしくないチームになっています。
まとめ
ゲーム中心の練習になると、指導者が思ったようにはいかないことが多いと思います。
ですが、そこを我慢した先には、指導者も見ててワクワクするようなチームを見ることができます。
指導者が自分の理論を教え込むと、成果が出るのは早いですが、指導者以上のチームはできません。
これからジュニア年代の指導をやっていこうと思う方は、このようなやり方もあることを知っておいてください。
いつか、必ず役に立つと思います。